コラム「男の顔ネクタイ」

Vol.3 同じネクタイに出会わない?Update:April 3rd, 2014

日本でネクタイを使う人は約3千万人。買われる本数は輸入品も含めて、年間約4千万本前後。もちろん世の中の好・不況でその数や価格は上下するが、他のアパレル商品にくらべて、いつも極端に消費が増減しないのがネクタイ。

ネクタイ人口一人の平均所有本数が約20本前後の日本は欧米諸国に比べてそう少ないとはいえないが、年間購入本数の一人平均1.3本は欧米の6~7本に比べると、少々侘しい数字。

「これは余所(よそ)行き(晴れ着)」と、持ってはいるけど、取換えて楽しまない昔の着物時代型日本人の名残があるのだろうか。

「気分に合わせて日々取り替える」欧米人の「衣の伝統と習慣」に対して明治を境にする「西洋服後発国」だからで仕方ないとは思うのだか?ジーンズ・Tシャツで過ごしてきたとはいえ、リクルート・スーツの新社会人の着こなしにはがっかりさせられることが多い。

輸入も含めて、日本で年間に製作されるネクタイ柄の数はどれくらいだろう。

大手問屋だと春、秋、冬の3シーズン、一問屋で計約5千柄。1柄×平均4配色で約2万点になる。全国のネクタイ業者の製作本数の推測量、年間約30万点。この「おどろくほど多品種少量生産商品」が全国各地へと流通する。

もちろん小売店頭に全色柄が並ぶわけでないが、単純計算だと、新柄だけでも同じ色柄約30万点÷3千万人=100本。つまり同じもの約100本が全国へ・・・。

「偶然同じネクタイをした人に出会う確率」は限りなく0に近いことになる。

「いかに感性でものを選ぶ時代」とは言え、まさに十人十色の好み、千差万別の色柄を対象別にどうして適量作れるのか・・・・・・・・・・。

通常問屋は一年先の色柄の変化を読み取って企画に入るのだが、年間約2万点を創る大手問屋とて「これ、売れそうだから多い目に作ろうか」なんていい加減な企画を立てていては、翌年とんでもない売れ残り在庫をかかえこむことになる。
そこで業者は、色柄・価格が重複しないよう、分類枠にあてはめた企画を立ててから製作に入る。収集した来年の色柄傾向資料+年代感覚+各地方色の特質などの資料をもとに経験を活かして生産計画を立てる。

企画するには、それらを整理する各社各自のノーハウを持っている。
実に多種多様な品種の企画・・・・・、これらの図表は、言葉は堅苦しいが、企画担当者間の「感覚を伝える記号」のようなものでそのポジションにしたがって、素材・縫製企画などを進めて行く。

通販会社のネクタイ特集などに使われていた代表的な表などを見ると… 

ネクタイの年々の色柄変化にたいしての、無関心派(=ネクタイの年々の色柄変化などは気にしない)約30%、保護色派(=目立ちたくない派)約40%、自己主派(積極的生活思考派)約30%が現状となる。

「同系色の濃淡でまとめる楽しみ方」と「反対色で楽しむ」があるが、いずれにしてのコントラストに欠けたスーツ姿ほどみずぼらしいものはない。
鏡でないと見えないのが自分の顔とネクタイだが、せっかく締めているネクタイが「男の顔」だとしたら、たまには大きな鏡で「自分が気にしない派」か「積極派」かぐらいは確かめてみてはどうだろう。